転職先から「前職の源泉徴収票を提出してください」と言われたのに、前の会社からもらえない…。これは意外と多いトラブルです。辞めた会社に連絡すること自体が気が重いという方も多いでしょう。
源泉徴収票の発行は会社の法的義務です。もらえない場合でも、段階的に対処すれば必ず解決できます。この記事では、源泉徴収票がもらえない場合の具体的な対処法を解説します。
源泉徴収票に関する手続きは国税庁公式サイトで確認できます。厚生労働省の労働基準ページも参考にしてください。
そもそも源泉徴収票はなぜ必要?
転職先が源泉徴収票を求める理由は、年末調整のためです。1年間の所得税を正確に計算するには、前職での給与・天引き額を把握する必要があります。前職の源泉徴収票がないと、転職先で年末調整ができず、自分で確定申告することになります。
源泉徴収票に記載されている情報
源泉徴収票には以下の情報が記載されています。これらの情報がないと、転職先では正確な年末調整ができません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支払金額 | 1月1日から退職日までの給与総額(額面) |
| 給与所得控除後の金額 | 年の途中退職の場合は空欄 |
| 所得控除の額の合計額 | 年の途中退職の場合は空欄 |
| 源泉徴収税額 | 天引きされた所得税の合計額 |
| 社会保険料等の金額 | 天引きされた社会保険料の合計額 |
特に重要なのは「支払金額」と「源泉徴収税額」です。これらが分からないと年末調整で正しい所得税額を計算できず、多く払いすぎた税金が戻ってこなかったり、逆に追加で納税が必要になったりします。

源泉徴収票が届く通常のタイミング
| 状況 | 届くタイミング |
|---|---|
| 年末まで在籍(12月退職) | 1月末まで |
| 年の途中で退職 | 退職後1ヶ月以内 |
| 法律上の期限 | 退職日の翌月末日(所得税法第226条) |
法律では期限が定められていますが、実際にはこの期限を守らない会社も少なくありません。催促しないと動かない会社は本当に多いため、退職後1ヶ月経っても届かなければ早めに連絡しましょう。円満に退職するための交渉術は以下の記事で詳しく解説しています。

届かないケースはどれくらい多い?
意外に思われるかもしれませんが、源泉徴収票が期限内に届かないケースは珍しくありません。特に以下のような会社では遅延が起こりがちです。
- 中小企業・零細企業:経理担当者が少なく、対応が後回しになりやすい
- 社員の入退社が頻繁な会社:処理が追いつかないことがある
- 外部の税理士に委託している会社:発行の手間が増えるため遅れがち
- 退職時にトラブルがあった会社:意図的に遅らせるケースも(これは違法)


もらえない場合の対処法(ステップ別)
ステップ1:前の会社に直接連絡する
まずは電話やメールで、経理部門や人事部門に連絡しましょう。「源泉徴収票を送っていただきたいのですが」と丁寧に伝えれば、多くの場合はこの段階で解決します。単に発行が遅れているだけのケースが大半です。
連絡時の例文
メールの場合
件名:源泉徴収票の発行のお願い
○○株式会社 経理部御中
お世話になっております。○月に退職いたしました○○です。
転職先での年末調整に必要なため、源泉徴収票の発行をお願いしたく、ご連絡いたしました。
お手数をおかけしますが、下記住所宛にお送りいただけますでしょうか。〒XXX-XXXX
○○県○○市○○ X-X-X
○○ ○○(氏名)何卒よろしくお願いいたします。
電話の場合
「お忙しいところ恐れ入ります。○月に退職いたしました○○と申します。源泉徴収票の件でご連絡いたしました。転職先から提出を求められておりまして、発行していただくことは可能でしょうか。」
ステップ2:内容証明郵便で催促する
電話やメールで対応してもらえない場合は、内容証明郵便で発行を求めます。法的な記録が残るため、会社側も無視しにくくなります。
内容証明郵便は郵便局の窓口で差し出せます。費用は通常の郵便料金に加えて480円(加算料金)です。配達証明を付けると、相手に届いたことの証明も残るのでさらに安心です。


ステップ3:税務署に「源泉徴収票不交付の届出」を提出する
会社が応じない場合、管轄の税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出できます。税務署が会社に対して発行するよう行政指導を行ってくれます。これは非常に効果的で、ほとんどのケースで発行につながります。
不交付届出に必要なもの
| 必要書類 | 入手方法 |
|---|---|
| 源泉徴収票不交付の届出書 | 国税庁のWebサイトからダウンロード可能 |
| 給与明細のコピー | 手元にあるものをコピー(なくてもOK) |
| 雇用契約書のコピー | 入社時に受け取ったもの(なくてもOK) |
| 会社に催促した記録 | メールのやり取りや内容証明郵便の控え |
届出書の記入は難しくありません。国税庁のWebサイトに記載例もあるので、それを見ながら記入すればOKです。分からない点があれば、管轄の税務署に電話で相談すると親切に教えてもらえます。
ステップ4:確定申告で自分で対応する
最終手段として、源泉徴収票なしで確定申告する方法もあります。給与明細から年間の給与総額と源泉徴収税額を計算して申告します。ただし本来は会社の義務ですので、まずはステップ3までを試してください。


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ケース別の対処法
| ケース | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 会社が倒産した | 経理機能が停止 | 破産管財人に連絡、または税務署で給与支払報告書から対応 |
| 円満でない退職 | 嫌がらせで発行しない | 税務署に不交付届出を提出 |
| 単に忘れている | 手続きの遅延 | 電話で催促すれば解決するケースが多い |
| 会社が小規模で知識がない | 発行方法が分からない | 丁寧に説明するか税務署に相談 |
会社が倒産した場合の詳しい対処法
前職の会社が倒産してしまった場合は、通常の手順では源泉徴収票を受け取れません。しかし、以下の方法で対処できます。
- 破産管財人に連絡する:破産手続き中であれば、管財人が経理業務を引き継いでいる場合がある
- 税務署に相談する:会社が提出した「給与支払報告書」の情報をもとに対応してもらえることがある
- 給与明細から自分で計算する:確定申告時に給与明細を添付して申告する
倒産した会社の情報は、裁判所の破産手続き開始決定の公告で確認できます。管財人の連絡先もそこに記載されています。


転職先への伝え方
源泉徴収票がまだ届いていない場合、転職先には正直に「前職に催促しているが、まだ届いていない」と伝えましょう。年末調整の期限(12月)までに届けば問題ありません。間に合わない場合は、確定申告で対応することを伝えれば理解してもらえます。
状況別の伝え方
| 状況 | 伝え方の例 |
|---|---|
| 催促中の場合 | 「前職に発行を依頼しておりますが、まだ届いておりません。届き次第すぐに提出いたします」 |
| トラブルになっている場合 | 「前職からの発行が滞っているため、税務署に相談しております。年末調整に間に合わない場合は確定申告で対応いたします」 |
| 前職が倒産した場合 | 「前職の会社が倒産しており発行が困難な状況です。税務署と相談の上、確定申告で対応する予定です」 |
転職先の経理担当者もこのようなケースには慣れています。大切なのは、早めに状況を伝えて「放置していない」ことを示すこと。隠したり曖昧にしたりするのが一番良くありません。転職時の健康保険の切り替え手続きについては以下の記事で詳しく解説しています。
https://tenshoku-plus-lab.com/?p=50
源泉徴収票の見方と確認ポイント
源泉徴収票を受け取ったら、提出前に以下のポイントを確認しましょう。記載内容に誤りがあると、年末調整や確定申告の計算が狂ってしまいます。
- 氏名・住所:誤字脱字がないか確認
- 支払金額:給与明細の合計と大きなズレがないか確認
- 源泉徴収税額:天引きされた所得税の合計と概ね一致するか確認
- 社会保険料等の金額:社会保険料の天引き額と概ね一致するか確認
- 退職日:実際の退職日と一致しているか確認
もし記載内容に誤りがあった場合は、前職の会社に訂正を依頼しましょう。訂正に応じてもらえない場合は、税務署に相談できます。転職時の住民税の手続きについては以下の記事で詳しくまとめています。





よくある質問(FAQ)
Q. 源泉徴収票の発行に費用はかかる?
A. かかりません。発行は会社の義務であり、退職者が費用を負担する必要はありません。もし費用を請求されたら、税務署に相談しましょう。
Q. 給与明細で代用できる?
A. 年末調整では代用できません。ただし確定申告では、給与明細をもとに計算することが可能です。あくまで最終手段ですが、対処法はあります。
Q. 源泉徴収票不交付の届出を出すと前の会社に罰則はある?
A. 税務署から行政指導が入ります。それでも発行しない場合、所得税法違反として罰則(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)が科される可能性があります。
Q. 退職後何年まで源泉徴収票を請求できる?
A. 法律上の保管義務は7年間です。7年以内であれば発行を請求できます。ただし早めに請求するに越したことはありません。
Q. 複数の会社で働いていた場合は?
A. その年に在籍したすべての会社の源泉徴収票が必要です。派遣やアルバイトも含めて、すべての勤務先に発行を依頼しましょう。
Q. 源泉徴収票を紛失した場合は再発行してもらえる?
A. 再発行は可能です。前職の会社に「再発行をお願いしたい」と連絡すれば対応してもらえます。再発行に費用がかかることもありません。紛失に備えて、受け取った源泉徴収票はコピーを取っておくのがおすすめです。
Q. 源泉徴収票がもらえないまま年末を迎えたらどうなる?
A. 転職先での年末調整はできなくなりますが、翌年の2月16日〜3月15日の確定申告期間に自分で確定申告すれば問題ありません。確定申告をすれば、払いすぎた税金が還付されます。
Q. 源泉徴収票はデータ(PDF等)でもらっても有効?
A. 電子交付(PDFなど)でも有効です。ただし、転職先が紙の原本を求める場合もあるので、その場合は印刷して提出すれば問題ありません。
まとめ
源泉徴収票がもらえないトラブルは、正しい手順で対処すれば必ず解決します。
- まずは前の会社に直接連絡して催促する
- 応じない場合は内容証明郵便で記録を残す
- それでもダメなら税務署に「源泉徴収票不交付の届出」を提出
- 源泉徴収票の発行は会社の法的義務(所得税法第226条)
- 転職先には正直に状況を伝え、必要に応じて確定申告で対応
- 受け取ったら中身を必ず確認する(金額の誤りがないか)
- 給与明細は捨てずに保管しておく(最終手段として使える)
面倒に感じるかもしれませんが、放置すると年末調整や確定申告でもっと手間がかかります。確定申告の方法については国税庁公式サイトで詳しく案内されています。ハローワークでも退職時の各種手続きについて相談できますので、早めの対応を心がけてください。
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