転職を考えたとき、多くの人が最初にぶつかる壁が「先に退職してから転職活動すべきか、それとも在職中に動くべきか」という問題です。この順番を間違えると、金銭面・精神面の両方で大きなダメージを受けることがあります。
結論から言うと、ほとんどのケースで「在職中に転職活動を始め、内定が出てから退職する」のがベストです。ただし、心身の健康が限界に達している場合など、例外もあります。
この記事では、在職中と退職後のそれぞれのメリット・デメリットを詳しく比較し、あなたの状況に合った最適な順番を見つけるお手伝いをします。具体的なスケジュール例や退職の切り出し方まで網羅しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。

在職中転職 vs 退職後転職 比較表
まずは全体像を把握するために、両方のパターンを一覧で比較します。
| 比較項目 | 在職中に転職活動 | 退職後に転職活動 |
|---|---|---|
| 収入 | 途切れない | 無収入期間が発生 |
| 精神的余裕 | 仕事との両立でストレスあり | 時間に余裕がある |
| 面接の調整 | 平日の対応が難しい | 自由にスケジュールを組める |
| 企業からの評価 | 「現職がある」安心感 | ブランクが長いと不利に |
| 焦りの度合い | 焦らず吟味できる | 生活費の不安から焦りがち |
| 社会保険 | 継続される | 国保・国民年金への切り替えが必要 |
| 失業保険 | 関係なし | 自己都合退職は2ヶ月の給付制限あり |
| 年収交渉の立場 | 強い(比較対象がある) | 弱くなりがち |
| 転職活動に使える時間 | 限定的 | フルタイムで活動可能 |
在職中に転職活動すべき5つの理由
1. 収入が途切れない安心感
転職活動は予想以上に時間がかかることがあります。dodaの調査データによると、転職活動の平均期間は約3ヶ月。長ければ半年以上かかるケースもあります。その間収入がゼロだと、生活費の不安から「早く決めなきゃ」と焦り、妥協した転職をしてしまうリスクが高まります。
「経済的に余裕がない状態での転職活動は、判断力を鈍らせる最大の要因」です。生活費の心配をしながらでは、冷静な企業選びはできません。
2. 年収交渉で強い立場に立てる
在職中の転職活動は、年収交渉において大きなアドバンテージになります。「今の会社を辞めてでも行きたい」という状態と、「行くところがなくて困っている」という状態では、企業側の受け止め方が全く異なります。在職中であれば「現年収以上でなければ動かない」という交渉カードを使えます。
3. 「やっぱり転職しない」という選択ができる
転職活動を通じて他社の話を聞くことで、「今の会社のほうが実は恵まれている」と気づくこともあります。在職中なら「転職しない」というカードをいつでも切れます。退職してしまうとこの選択肢は消滅するため、後戻りができません。
4. ブランク(空白期間)が生じない
履歴書に空白期間があると、面接で必ず理由を聞かれます。3ヶ月以内であれば問題視されることは少ないですが、半年以上のブランクは「なぜ決まらなかったのか」と疑問を持たれやすくなります。在職中に転職すれば、この問題は発生しません。
5. 社会保険の手続きが不要
在職中に転職先を決め、退職翌日に入社する形を取れば、健康保険や厚生年金の切り替え手続きは会社が行ってくれます。退職後に空白期間があると、国民健康保険や国民年金への切り替えを自分で行う必要があり、手続きの手間と追加の保険料負担が発生します。
在職中の転職活動がおすすめなのは「安心感」が理由です。収入が途切れない、交渉力がある、後戻りできる――この3つの安全装置があることで、焦らず納得のいく転職先を選べます。

退職後に転職活動したほうがいいケース
在職中が基本とはいえ、以下に当てはまる場合は退職を先にする方が結果的に良い転職につながることがあります。無理に在職中に活動を続けるより、一度退職して態勢を立て直した方が良いケースもあるのです。
ケース1:心身の健康が限界に達している
パワハラ・過重労働・精神的な苦痛で心身が壊れそうな場合は、迷わず退職を優先してください。健康を損なってしまったら、転職活動どころではなくなります。回復に数ヶ月かかることもあるため、まずは休息を取ることが最優先です。
ケース2:残業が多すぎて転職活動の時間が取れない
毎日深夜まで働いている状態では、面接の時間を確保することすら困難です。有給を使おうにも申請しにくい雰囲気の職場もあります。物理的に転職活動が不可能な場合は、退職して時間を確保するのも合理的な判断です。
ケース3:十分な貯金がある(生活費6ヶ月分以上)
生活費の6ヶ月分以上の貯金があれば、退職後でもある程度の余裕を持って転職活動に臨めます。焦らずじっくりと企業選びができるため、貯金に余裕がある方は退職後の活動も選択肢に入ります。
ケース4:キャリアチェンジのための準備期間が必要
資格の取得、留学、プログラミングスクールへの通学など、キャリアチェンジに向けた学習期間が必要な場合は、退職して集中する方が効率的です。この場合のブランクは「計画的なキャリアチェンジ」として説明できるため、面接でもネガティブに受け取られにくいです。
ケース5:退職しないと入社できない転職先がある
公務員試験や一部の企業では、入社時期が固定されており、在職中からの調整が難しいケースもあります。このような場合は退職を先にする必要があります。
退職後の転職活動を選ぶ場合、失業保険の受給条件を必ず確認してください。自己都合退職の場合は退職後2ヶ月の給付制限期間があり、その間は給付金を受け取れません。ハローワークの雇用保険手続きガイドで詳細を確認できます。
在職中の転職活動を成功させるコツ
1. 転職エージェントを活用する
在職中の転職活動で最も大変なのが「時間の確保」です。転職エージェントを利用すれば、求人探し・面接日程の調整・年収交渉などを代行してもらえるため、限られた時間を有効活用できます。dodaやリクルートエージェントなど、大手エージェントは土日や夜間の面談にも対応しています。
2. オンライン面接を活用する
記事執筆時点では、一次面接や二次面接をオンラインで実施する企業が増えています。オンライン面接なら移動時間がかからないため、昼休みや業務終了後にも対応可能です。「オンライン面接は可能ですか?」と事前に確認してみましょう。
3. 有給休暇を計画的に使う
面接が対面で行われる場合は、有給休暇を活用するのが一般的です。ただし、不自然なタイミングで何度も有給を取ると「転職活動しているのでは?」と疑われる可能性があります。半休を活用する、私用という理由で申請するなど、目立たない工夫が必要です。
4. 転職活動を周囲に話さない
信頼できる同僚であっても、転職活動のことは話さないのが鉄則です。悪意がなくても情報が漏れることはあり、上司の耳に入ると退職交渉前に気まずい状況を生んでしまいます。
5. 転職サイトの「ブロック企業設定」を活用する
ビズリーチやdodaなどの転職サイトには、特定の企業にプロフィールを非公開にする「ブロック企業設定」機能があります。現在の勤務先や取引先をブロックリストに登録しておけば、転職活動がバレるリスクを最小限にできます。

在職中の転職活動スケジュール例【3ヶ月プラン】
在職中に転職活動を進める場合のモデルスケジュールを紹介します。
| 時期 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1〜2週目 | 転職エージェント・転職サイトに登録、自己分析 | 2〜3社のエージェントに登録。初回面談で希望条件を明確に伝える |
| 3〜4週目 | 求人リサーチ、職務経歴書の作成・添削 | エージェントに添削してもらい、書類通過率を上げる |
| 5〜8週目 | 応募、書類選考、面接 | 土日・夜間・有給・オンライン面接を活用。週2〜3件のペースで面接 |
| 9〜10週目 | 内定獲得、条件交渉、入社日の調整 | 複数の内定を比較検討。年収交渉はエージェントに任せるのも手 |
| 11〜12週目 | 退職交渉、引き継ぎ準備 | 直属の上司に退職の意思を伝える。引き継ぎ資料の作成を開始 |
| 13週目〜 | 退職、有給消化、新しい職場に入社 | 円満退社を心がける。最終出社日と入社日の間に休息期間を確保 |
このスケジュールはあくまで目安です。業界や職種によって選考期間は異なるため、余裕を持って計画を立てましょう。
退職を切り出すタイミングと伝え方
内定が出たら、できるだけ早く直属の上司に退職の意思を伝えましょう。退職に関する法律上のルールと、円満退社のための実務的なポイントを整理します。
法律上のルール
労働基準法では、正社員(期間の定めのない労働契約)の場合、退職の申し入れから2週間後に退職が成立すると定められています。ただし、就業規則で「1ヶ月前に通知」などと定められている場合は、それに従うのが一般的です。
円満退社のための伝え方
- 最初に伝えるのは直属の上司:同僚や他部署の人に先に話すのはNG
- 退職理由は前向きに:「新しい分野に挑戦したい」など、現職への不満ではなく未来志向で伝える
- 退職日は相談ベースで提示:「〇月末を考えています」と希望を伝えつつ、引き継ぎ期間も考慮して調整する
- 引き止めに対する対応を決めておく:年収アップや部署異動を提示されても、転職の意思が固いなら丁重にお断りする
- 退職届は口頭で了承を得てから提出:いきなり退職届を突きつけるのはマナー違反
退職交渉でよくあるトラブルと対処法
| トラブル | 対処法 |
|---|---|
| 「後任が決まるまで待ってほしい」と引き延ばされる | 引き継ぎ資料を作成し、「〇月末までに完了できるよう準備します」と期限を示す |
| 退職を認めてもらえない | 法律上、退職は労働者の権利。書面で退職届を提出すれば2週間後に退職は成立する |
| 年収アップで引き止められる | 一時的な年収アップでは根本的な問題(キャリア・社風・成長性)は解決しない。冷静に判断する |
| 退職日を大幅にずらすよう求められる | 転職先の入社日を伝え、調整可能な範囲で対応する。無理な場合は「転職先との約束がある」と毅然と伝える |

退職後に転職活動する場合の注意点
やむを得ず退職を先にする場合は、以下の点に注意しておきましょう。
1. 生活費のシミュレーションを必ず行う
退職後は収入がゼロになります。家賃・食費・保険料・住民税(退職翌年も発生)などの固定費を洗い出し、最低6ヶ月分の生活費を確保してから退職しましょう。
2. 社会保険の切り替え手続きを忘れない
退職後は健康保険と年金の切り替え手続きが必要です。健康保険は「任意継続(退職後20日以内に申請)」「国民健康保険(退職後14日以内に申請)」「家族の扶養に入る」の3つの選択肢があります。
3. 失業保険の手続きを早めに行う
退職後はすぐにハローワークで失業保険の手続きを行いましょう。自己都合退職の場合は2ヶ月の給付制限がありますが、その間も求職活動実績を積むことで給付の準備が進みます。
4. 転職活動のスケジュールを立てる
「退職したから時間はたっぷりある」と油断すると、ダラダラと時間が過ぎていきます。退職後の転職活動でも、「いつまでに何社応募する」「面接は週に何件入れる」という具体的な目標を設定しましょう。
5. ブランクの説明を準備する
面接では必ず「退職後は何をしていたか」を聞かれます。「資格の勉強をしていた」「業界研究を行っていた」「家族の介護で一時的に離職していた」など、合理的な説明を用意しておきましょう。
退職前にやっておくべきチェックリスト
- 退職後の生活費を6ヶ月分以上確保しているか確認
- 有給休暇の残日数を確認(消化の計画を立てる)
- 退職金の有無と金額を確認
- 健康保険の切り替え方法を調べておく(任意継続 or 国保 or 扶養)
- 住民税の支払い方法を確認(退職後は自分で支払いが必要)
- 源泉徴収票を退職時にもらう
- 転職先が決まっている場合は入社日を確定させておく
- 引き継ぎ資料を作成しておく
- 私物の整理(デスク・PC内のデータ削除など)
- お世話になった方への挨拶リストを作成
よくある質問(FAQ)
Q. 在職中の転職活動は会社にバレない?
基本的にバレません。転職サイトやエージェントに登録しても会社に通知が行くことはなく、エージェントには守秘義務があります。転職サイトの「ブロック企業設定」で現在の勤務先を非表示にしておけばさらに安心です。SNSでの発言や、不自然な頻度での有給取得に気をつければ問題ありません。
Q. 内定から入社までどれくらい待ってもらえる?
一般的に1〜2ヶ月程度は待ってもらえます。3ヶ月以上になると企業側が不安になるケースもあるため、応募前に「入社可能時期」を伝えておくとスムーズです。エージェント経由の場合は、入社日の調整もエージェントが代行してくれます。
Q. 退職後のブランクはどれくらいまで許容される?
3ヶ月以内であればほとんど問題ありません。6ヶ月を超えると面接で理由を深掘りされやすくなり、1年以上のブランクは選考で不利になる可能性が高いです。ブランクが長くなりそうな場合は、その間に資格取得やスキルアップに取り組んでおくと説明がしやすくなります。
Q. 退職後に失業保険をもらいながら転職活動できる?
できます。ハローワークで求職申込みを行い、受給資格を得れば、転職活動をしながら失業保険(基本手当)を受け取れます。ただし自己都合退職の場合は2ヶ月の給付制限期間があり、その間は支給されません。受給期間中は4週間に1回の認定日にハローワークで求職活動実績を報告する必要があります。
Q. 退職理由は正直に言うべき?
嘘はNGですが、全てを正直に言う必要もありません。ネガティブな退職理由はポジティブに変換して伝えるのが基本です。「人間関係が悪い」→「チームワークを重視する環境で力を発揮したい」、「給与が低い」→「自分のスキルに見合った評価を得られる環境で成長したい」のように言い換えましょう。
Q. 有給休暇は消化してから退職すべき?
可能であれば消化した方がお得です。有給休暇は労働者の権利であり、退職時に消化を拒否されることは法律上できません。最終出社日と退職日の間に有給消化期間を設けるのが一般的です。
Q. 退職代行サービスは使ってもいい?
法的には問題ありませんが、使わなくても良い手段です。退職代行は「退職を言い出せない」「引き止めが強すぎる」「パワハラで対話ができない」など、直接の退職交渉が困難な場合の最終手段として検討しましょう。円満退社を望むなら、自分で上司に伝えるのがベストです。

まとめ:「在職中に転職活動→内定後に退職」が基本
転職と退職の順番について、改めてポイントを整理します。
- ほとんどのケースで「在職中に転職活動→内定後に退職」がベスト
- 在職中なら収入が途切れない・年収交渉に強い・「転職しない」選択もできる
- 心身の健康が限界の場合は退職を優先。ただし貯金6ヶ月分は確保
- 在職中の転職活動はエージェント・オンライン面接・有給を活用して効率化
- 退職後のブランクは3ヶ月以内なら問題なし。長引くほど不利に
- 内定を得てから退職を切り出すのがベストタイミング
- 退職交渉は円満退社を心がけ、引き継ぎをしっかり行う
- 退職前に社会保険・失業保険・生活費の準備を忘れずに
焦って退職して後悔するよりも、働きながらじっくり情報収集し、「これだ」と確信できる転職先を見つけてから動く。それが転職を成功させるための最も確実なルートです。

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